こんにちは、ATLの別府です。
前回に引き続きエストニア出張について書いていきます。
今回は、エストニアで5/31と6/1の2日間にわたり開催されたテックカンファレンス「Latitude59」の参加レポートです。

このカンファレンスは政府が主催しており、エストニア最大のカンファレンスです。
しかしながら他の国のカンファレンスと比較すると、規模が大きいわけではありません。
今年の参加人数は1500人程度でした。(フィンランドのSlushは1万人を超えています。)

2016年のテーマは「バーチャル国家」・「AI」・「VR/AR」・「IoT」の4つです。

いざカンファレンスへ

会場は元々発電所や工場だった再開発区域となっており、独特な建物・雰囲気でした。

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37のスタートアップがブースを出しており、プロダクトのデモを展示していました。

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エストニアのスタートアップは、エストニアンマフィアと呼ばれています。

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なんと日本からは福岡市のブースがありました。

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福岡市ではスタートアップの推進に注力しており、スタートアップカフェを運営していたりします。
そのため、政府や行政主体となってスタートアップを推進しているエストニアのような都市とは親和性が高いと思われます。

専用のアプリの充実

Latitude59では、専用のスマホアプリも充実していました。

チケット機能や当日のスケジュールは当然です。
スピーカーのプロフィールも確認できます。

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そして参加者が一覧として公開されていて、驚くことに気になる人がいればアポがとれます!
参加者には起業家や投資家が多く、会場にもアポルームなる場所があり、商談がさかんに行われていました。

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セッション

1日目と2日目の両方とも参加し、いくつかピックアップして内容をご紹介します。

「Building Your Startup – Founders’ Perspective!」

スタートアップのファウンダー達によるパネルセッション。
メインのテーマは「スタートアップを始めるにはどこが良いのか?」です。
スタートアップといえば依然としてシリコンバレーが先端ではありますが、物価や人件費の高沸などにより、その他の都市でもスターアップが増えつつあります。ユニコーンと呼ばれるスタートアップのうち40%はシリコンバレー以外で誕生しています。(とはいえ60%もシリコンバレー)
スピーカーの人たちの結論としては、「国や場所にこだわる必要は無い」でした。
では、どこに拠点を置くか。 「ユーザーやクライアントになるべく近いところ」です。
「クライアントがアジアに多いからシンガポールにオフィスを置いた。シリコンバレーにオフィスは無い。」というスピーカーもいました。
個人的に一番面白かった発言は「githubにコミットできるなら場所は関係ない」ですね。
至極名言だと思います。

「FIVE YEARS FROM NOW!」

メインテーマの1つであるIoTの事例がいくつか紹介されていました。

ハードウェアと人類の歴史、という壮大なテーマからキーノートが始まりました。

すべての人類が直面している課題・・・ 水・エネルギー・農業・食料・教育・医療
これらはすべてハードウェアを通して解決されてきました。
過去のあらゆる発明は人類を前進させてきた。どのようなハードウェアの発明があったでしょうか?
電話、鉄道、コンピュータなどです。
IoTが注目されているこれからの時代、再びハードウェアで人類を前進させよう。
貧困に苦しんている人に食料を届け、綺麗な水を届けることができるようになるかもしれない。

ソフトウェアの世界においては、githubにより人々がソースコードを共有できるようになりました。
しかしながら、ハードウェアの世界においては、ソースコードを共有するだけでは不十分です。
どのような部品をどのように組み合わせているのか、が重要です。
そこで、ソフトウェアのgithubのように、ハードウェアの作り方を共有するスタートアップがhackster.ioです。また、3Dプリンティングに特化したものとしてThingiverseがあります。

そして、エストニアのIoTスタートアップとして今もっとも注目されているのはデリバリーロボットを提供するstarshipです。

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元skypeメンバーによって創業され、小型の無人配達ロボットを開発しています。前方にカメラがついており、障害物を検知してルートを変更します。もちろん歩行者もカメラで検知するので思わぬ事故も防ぐことができるようです。すでに約5800キロ走行し、13万人の歩行者とすれ違ったが事故は起きていなようです。今年に入ってからロンドンやベルリンでもテスト走行を始めています。

「Get Investors to Fall in Love! Getting to Wow!」

こちらのセッションではシリコンバレーのVCによるスピーチ。
大量のスタートアップによるエレベータピッチを見てきた経験から、どのようなピッチであれば投資家の心が動かされるのか、という内容。

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ピッチのコツ
スタートアップの誰もが3,5,10分といった複数のピッチを用意している。
けれどもエレベーターピッチが年々増えるにつれ、テンプレートのような内容が増えてきた。
「○○に自分の会社のことを入れよう!」「課題は何?」「マーケットはどれくらい?」という感じに。
だけど、そんなのはぶっちゃけ聞き飽きた。20秒で説明できる?本質は何?
説明できないなら家に帰ろう。

じゃ何を言えばいいのか?3つのポイントを紹介します。
でもこれはテンプレートじゃないです。あくまでガイドライン。

1:概要 何をやっている/やろうとしているのか
2:利益 誰にどんな利益を提供しているのか
3:差別化 競合と何が違うのか

投資家といえどもみんな人間なのです。心揺さぶられる内容であれば型なんていらないんです。
「Wow」と言える内容にしましょう。

「VIRTUAL NATIONS」

このセッションでは「e-resident」をターゲットにするスタートアップが紹介されていました。
「e-resident」とは、非エストニア在住の外国人に政府の発行するIDカードを与えるというもので、エストニアのさまざま電子サービスにアクセスでき、銀行口座の開設、企業経営も可能になります。2014年12月にベータ版としてスタートし、現在では127ヶ国から1万人を超える人々が登録し、1300社が登記されるまでに拡大しています。

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e-residencyと提携を開始したスタートアップが紹介されていました。

WageCan
https://www.wagecan.com/
bitcoinを利用したデビットカード
e-residencyマーケットプレイスにおいて、ブロックチェーンベースの仮想通貨として一番最初のサービスです。

Stampery
https://stampery.com/
ドキュメントの公証サービス
ブロックチェーンベースの証明書と認証サービスを提供しており、ドキュメントの存在(Proof of Existence)や所有権(Proof of Ownership)を証明することができます。

Funderbeam
https://markets.funderbeam.com/
スタートアップ株式のオンラインマーケットプレイスを提供しています。
個人投資家を集めてシンジケートを組むリード投資家は、このプラットフォームを利用してスタートアップに投資することが出来ます。

この3つに共通していることは、いずれも、個人の認証方法にe-residencyを採用しているという共通点があります。

なぜ金融業界においてe-residencyが注目されているのか?

金融業界においてはKYC(顧客確認)とAML(アンチマネーロンダリング)が必要不可欠です。そしてKYCのプロセスは国によって異なっているのが現状です。
しかし、e-residencyというエストニア政府公認の公的個人認証をオンラインで利用することで、海外在住の人でも簡単に本人確認ができるということで注目されています
今後はFinTechの領域において、e-residencyを利用している人たちがマーケットになっていく可能性を感じました。

ピッチイベント

2日目の最後にはPitch@Palaceによるピッチステージ「Pitch@Palace Estonia」もありました。
Pitch@Palaceはイギリス王室アンドリュー王子が年に2回セント・ジェームズ宮殿で開催しているイベントの名称です。今回のピッチステージは予選を兼ねているようで、優勝者は2016年12月に開催されるPitch@Palace Globalに招待されるようです。イギリスの皇室がこういったピッチを主催しているのは面白いですね。
ヨーロッパから100を超えるスタートアップが応募し、決勝のピッチステージに進んだのは9社
そのうち受賞したスタートアップを紹介します。

優勝

RangeForce
https://rangeforce.com/
企業のIT担当者に対して、21世紀の脅威であるサイバー攻撃に対応できるようトレーニングを提供し、サイバー攻撃を対処できる人材を育成するサービスを展開エストニアは2007年に大規模なサイバー攻撃を受け、2時間近くシステムが停止した経験があることから、サイバー攻撃への対応を重要視しています。また、NATOの研究施設である、サイバーディフェンスセンターもエストニアにあるので、エストニアらしいスタートアップといえます。

Timbeter
http://www.timbeter.com/
迅速かつ正確な木材の測定のためのソリューションを提供。
時間がかかり、退屈な手動の測定を低減すること 時間がかかり、退屈な手動の測定を低減することできます。材木の断面の写真を撮るだけで、それぞれの木材のサイズを自動的に計算するサービス。これにより、時間がかかり、退屈だった手動の測定を低減することができます。写真を一枚撮るだけで数十本という単位で計算してくれるため、作業の効率化およびデータ/在庫の管理が可能になります。エストニアは国土の50%以上が森林となっているため、ここちらもエストニアらしいスタートアップです。

オーディエンス賞

投票はもちろんアプリでその場から
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COMODULE
http://www.comodule.com/
クラウドを利用した電動二輪車用のナビゲーションシステムを提供。開発拠点はエストニア、本社はベルリン。エンドユーザーが電池残量などを簡単に確認でき、盗難時にも追跡できるようになっている。また、三輪自動運転車のプロトタイプを開発しており、荷物の運搬や危険地帯での無人作業を可能にしているそうです。

特別賞(Sponsored by 福岡市)

Bike-ID
https://www.bike-id.eu/
自転車の盗難を保障する保険を提供しています。セキュリティーマーキングキットを利用することで、同社のデータベースに登録され、国境を超えて自転車を管理することができます。ヨーロッパでは毎年350万件もの自転車の盗難が起きており、ファウンダーのMeeriも盗難にあったことから起業に至ったそうです。

感想

グローバルは当たり前という感覚

登壇していたスタートアップは、タリン + シリコンバレー or NY or ロンドン orシンガポール という複数拠点が大半です。
プロダクトをスケールさせる段階としても、エストニアでテストマーケティングを実施し、ドイツ・フランスを中心としたヨーロッパ、アメリカ、アジア市場へと展開させていくことを想定しています。 ヨーロッパの人々にとって、国を超えることは、日本でいう都道府県をまたぐ程度に軽い感覚です。さらに、エストニア自体も非常に小さいため、国の外へと視点を向けることが当然になっています。

元skypeメンバーによるエコシステム

skypeはMicrosoftに買収されて規模が大きくなってしまい、ほとんどの創業メンバーは自分たちのスタートアップを初めているようです。
日本では「元リクルート」の人がビジネスの世界にたくさんいますが、それ以上にエストニアに「元skype」の人たちがたくさんいます。
Skypeが買収されたことにより、Skypeのメンバーにお金が渡り、エストニアのスタートアップを育むにはとても良い生態系が生まれていると言えます。

 

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